津藤つとう)” の例文
この人たちの間では深川の鳥羽屋の寮であった義太夫ぎだゆう御浚おさらいの話しや山城河岸やましろがし津藤つとうが催した千社札の会の話しが大分賑やかに出たようであった。
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
細木香以は津藤つとうである。摂津国屋つのくにや藤次郎である。わたくしが始めて津藤の名を聞いたのは、香以の事には関していなかった。香以の父竜池りゅうちの事に関していた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
母は津藤つとうめいで、昔の話をたくさん知っています。そのほかに伯母おばが一人いて、それが特に私のめんどうをみてくれました。今でもみてくれています。
文学好きの家庭から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
枳園きえん小野富穀おのふこくと口論をしたという話があって、その年月をつまびらかにせぬが、わたくしは多分この年の頃であろうと思う。場所は山城河岸やましろがし津藤つとうの家であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
津藤つとう即ち摂津国屋つのくにや藤次郎とうじろうは、名はりん、字は冷和れいわ香以こうい鯉角りかく梅阿弥ばいあみ等と号した。その豪遊をほしいままにして家産を蕩尽とうじんしたのは、世の知る所である。文政五年うまれで、当時四十歳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
姓は細木さいき、名は藤次郎、俳名はいみやう香以かうい、俗称は山城河岸やましろがし津藤つとうと云つた男である。
孤独地獄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みいちゃんは津藤つとうに縁故があるとかいう河野こうの某を檀那だんなに取っていたが、河野は遂にみいちゃんをめとって、優善が東京に著いた時には、今戸橋いまどばしほとりに芸者屋を出していた。屋号は同じ湊屋である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)