洋妾ラシャメン)” の例文
応接室にては三郎へいげんと卓子テエブルを隔てて相対し、談判今や正にたけなわなり。洋妾ラシャメンかたえに侍したり。かれは得々としてへいげんの英語を通弁す。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だって、あのお光さんは、南京洋妾ラシャメンだという話じゃあるけれど、こんな大金を、女愚連隊のくせに、持っているはずはねえじゃねえか」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或るものは自分はヴィクトリア公園の熱帯樹の下を黒奴ニグロの中年の紳士と日傘をさして歩いていた彼女を見かけたことがあると真実ほんとうらしく話して、彼女が洋妾ラシャメンだろうと云う。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
あの女は、金にさえなれば洋妾ラシャメンにもなり兼ねない女なんだから、駒井や我輩も同様に、学問そのものを利用して、大きな才取りができれば、それがもっぱら功名だと心得ている。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これはちょうど、弁天通りの外人向きな商店のウインドによくある洋妾ラシャメンの絵そのままな姿態である。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
館内には横浜風をよそおう日本の美婦人あり。けだし神州の臣民にして情を醜虜しゅうりょひさぐもの、俗に洋妾ラシャメンとなうるはこれなり。道をくにはずる色無く、人に遭えば、傲然ごうぜんとして意気すこぶあがる。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ははあ、そのことでかくもてんてこ舞をしているのか、帝国芸娼院というのは、洋妾ラシャメン立国論と共に、こいつの二大名案であって、先日来て、べらべらと能書をしゃべり立てて行った。
顔色がんしょく土のごとく恐怖せる洋妾ラシャメンを励まして、直ちにもららしめたる金貨百円を、三郎の前に差出さしいだせば、三郎はかずを検してこれを納め、時計を返附して応接室を立出で、待構えたる従者を呼べば
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ではひとつ、洋妾ラシャメン立国論以来の、鐚独創の名趣向をお聞きに入れますかな」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大っぴらで洋妾ラシャメンになれるということになると、何といっても異人は日本人より気前がいいから、たった一晩にしてからが、洋銀三枚がとこは出す、月極めということになれば十両はお安いところ
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)