沙金さきん)” の例文
その時蜑崎照文あまざきてるぶみふところより用意の沙金さきん五包いつつつみとりいだしつ。先ず三包みつつみを扇にのせたるそがままに、……三犬士さんけんし、このかねは三十りょうをひと包みとせり。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
入れ代りに従者らしき男が一のう沙金さきんをおいて風の如くぷッと去ってしまった。なんたる大人たいじんぶり、いやきもッ玉だろう。てんで歯の立つ相手ではない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五色に透いて輝きまするわにの皮三十六枚、沙金さきんつつみ七十たい
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いざとの立ち際にも、劉高はそっと一のう沙金さきんを袖の下へつかい「諸事、よろしく」と黄信のくつをも拝さんばかりなかた、ともに、青州行きの列に従った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、一枝花しか蔡慶さいけいも、兄の蔡福さいふくも、全然これを、意識的に見のがしていた傾向がある。——さきに梁山泊の密使柴進さいしんから沙金さきん千両をもらっていた礼心れいごころでもあったろうか?
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
負物まけものみつぎの式」といい、相互のあいだにけられている“負け物”——沙金さきん、織物、香料などの多額な賞品を——負け方から、勝ち方の組へたいして、いんぎん、敗者の礼をつくして