氣取けど)” の例文
新字:気取
「え、何處へも出られなかつたんです、父の病氣も惡かつたけれど、私が逃出さうとするのを氣取けどつて、母さんが動かさなかつたんです」
誰れも彼れの内心の葛藤を知らないのが一つの便利ではあつたけれども、彼れの不安を人に氣取けどられまい爲めには、彼れの意志を極度に働かせねばならぬ程のものだつた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
られてはならぬ、氣取けどられてはならぬといふやうなおもひであるのに、まあ!ひさしも、屋根やねも、居酒屋ゐざかやのきにかゝつたすぎも、百姓屋ひやくしやうや土間どまゑてある粉挽臼こなひきうすも、みなもつて、じろじろめるやうで
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
めひのお梅が、日頃から虐待ぎやくたいされて物置に寢泊りして居ることに氣が付いて、若しや氣取けどられたんぢやあるまいかと、はりに吊つて俺の眼から隱さうとしたんだ。
「お前は階下したにゐて、少しは氣取けどつてゐるだらうが、叔父さんの孫三郎は、何んのために押入へ入つたんだ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)