比羅びら)” の例文
談中——主なるものは、きのこで、かれが番組の茸をげて、比羅びらの、たこのとあのくたらを説いたのでも、ほぼ不断の態度が知れよう。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またこの飴屋が、喇叭らっぱも吹かず、太鼓をトンとも鳴らさぬかわりに、いつでも広告の比羅びらがわり、赤い涎掛よだれかけをしている名代の菩薩ぼさつでなお可笑おかしい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
献立がきが、処々ところどころくれないの二重圏点つきの比羅びらになって、辻々、塀、大寺の門、橋の欄干にあらわれて、芸妓げいしゃ屋台囃子やたいばやしとともに、最も注意を引いたのは、仮装行列のもよおしであった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引傾ひっかしいだ小屋に、むしろを二枚ぶら下げて、こいつが戸になる……横の羽目に、半分ちぎれた浪花節なにわぶし比羅びらがめらめらと動いているのがありました、それが宿しゅくはずれで、もう山になります。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一所ひとところ、板塀の曲角に、白い蝙蝠こうもりひろがったように、比羅びらが一枚ってあった。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小鳥は比羅びらのようなものに包んでくれた。比羅は裂いて汽車の窓から——小鳥は——包み直して宿へ着いてから裏の川へ流した。が、眼張魚めばるは、ひきがえるだとことわざに言うから、血の頬白は、うぐいになろうよ。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日の丸の旗を立って大船一ぱい、海産物積んで、乗出いて、一花咲かせる目的もくろみでな、小舟町へ商会を開いた当座、比羅びら代りの附合で、客を呼ぶわ、呼ばれもしたので、一座に河岸の人が多かったでな。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)