れつき)” の例文
母がさるれつきとした舊藩士の末娘であつたので、隨つて此舊城下蒼古のまちには、自分のために、伯父なる人、伯母なる人、また從兄弟なる人達が少なからずある。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
まづ如何いかやうに天下無敵を豪語しても構はないやうなものの、けれど現に将棋家元の大橋宗家そうけから名人位を授けられてゐる関根といふれつきとした名人がありながら
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
事件の全貌ぜんばうは、皆川半之丞の素姓が判りさへすれば、わけもなく見透せるやうな氣がしますが、いくら浪人でも、れつきとした二本差を、證據も何にもなしに縛るわけに行かず
れつきとした中堅作家として認められ、又、新聞や婦人雑誌に連載する長篇小説なども書いてゐたが、いくら定価金拾銭の薄つ片なものでも、月刊の雑誌などを出す余裕は殆んどなかつた。
今いふチエエスはそんないかさまなのとは粒のちがつたれつきとした芸術家である。
母がさるれつきとした旧藩士の末娘であつたので、随つて此旧城下蒼古のまちには、自分のために、伯父なる人、伯母なる人、また従兄弟なる人達が少なからずある。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その前年『鱧の皮』で世評をかち得、さらに『父の婚禮』に集められた短篇集を發表し、長篇『お光壯吉』を世に問うてゐた小劍は、私の目には仰ぎ見たいやうなれつきとした作家であつた。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
「西久保町の矢吹樣、以前はれつきとした直參ぢやが——」
「遊び人ぢやありませんよ。れつきとした職人ですよ」
「殺しがあつたんですよ、——尤も斬つたのは浪人ながれつきとした武家で、斬られた方は油蟲のやうな安惡黨だから、こいつは場所次第では、無禮討でも濟んだ筈ですが、困つたことに車坂御門の側で、最初に驅け付けたのは御山おやま同心だ」
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)