此所このところ)” の例文
わたくしは此所このところに瑞仙の書上かきあげを参照しなくてはならない。「時天明八戊午年人始て曼公の術あることを知る」と云ふ文である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
拙者がうちだと思へばいハテ百年住み遂げる人は無いわサト痩我慢の悟りを開き此所このところの新築見合せとし田へ引く流に口をそゝ冗語むだつかれの忘れ草笑聲わらひ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
斯て彦三郎は木蔭こかげかくれ居る處に夜駕籠よかごもどりと見えて一人は挑灯ちやうちんを持一人は駕籠かごかつぎ小便を爲ながら何と助十去年きよねん此所このところ獄門ごくもんに懸つた小間物屋彦兵衞那れは大きな間違まちがひ隱居を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
猶お周辺あたりに血の痕の無きを見ればほかにて殺せし者をかつぎ来りて投込みし者なるし又此所このところより一町ばかり離れし或家の塀に血の附きたる痕あれど之も殺したる所には非ず多分は血にまみれたる死骸を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
して伊勢地にり大廟にぬかづき二見ヶ浦で日の出を拜み此所このところお目とまれば鐵道にて東海道を歸るの豫算なるたけ歩いてといふ注文三十日の日づもりで行くか歸るか分からねど太華山人たいくわさんじん
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)