歌妓げいしゃ)” の例文
山県やまがたさんとか伊藤さんとか、豪い方の奥さんは、歌妓げいしゃだと云いますから、歌妓でもおじょろでも、それはかまわないようなものの、お宅は物がたい家ですから
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
何時いつの間にか一人の歌妓げいしゃが加わっていて一座は四人になっていた。三人は他愛ない話をして笑いあっていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
逢引橋あいびきばしなどのあった三角の水隈みずくまには、今度三角の不思議な橋がかかったが、あのあたりは地震ごろまで川獺の噂があって逢引橋のたもとにあった瓢屋ひさごやなどに来る歌妓げいしゃを恐れさした。
築地の川獺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この女の物ごし風体ふうていはどうしても良家りょうかの子女じゃない、女優のあがりか歌妓げいしゃのあがりである、それに一人でおると云うのは、旅にでも来ているのか、それともと考えて
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その日は二階に客も歌妓げいしゃも、じょちゅうも、何んにもいないことを知っている主翁は、びっくりして眼をみはった。そして主翁が何か云おうとすると二人の姿はふと消えてしまった。
鼓の音 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
強盗の真似まねをする必要はなかったのです、私はそれを女に用いたのです、私は知事の奥さんとも、公使の奥さんとも、市長の姉女あねむすめとも、歌妓げいしゃとも、女優とも関係したのです、そして
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その火葬場へは、米の弟の新吉と云うのも来ていたが、それは真箇の弟でなしに、米がまだ歌妓げいしゃをしていた時からの情夫で、土地の人から達磨の新公と渾名あだなせられている浪爺あそびにんであった。
妖蛸 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
粤西えっせい孫子楚そんしそという名士があった。枝指むつゆびのうえに何所どこかにぼんやりしたところがあったから、よく人にかつがれた。その孫は他所よそへ往って歌妓げいしゃでもいると、遠くから見ただけで逃げて帰った。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは話をするために呼んでいた歌妓げいしゃを出してあるらしい。丹前はうなずいた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小女こむすめはちょっと足を止めるようにしたが、すぐ歩き出した。山西はその右の手にじぶんの手をかけようとした。と、二三人の歌妓げいしゃらしい女伴おんなづれがむこうの方から来たので、出そうとした手をひっ込めた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
聞かずに河岸縁かしっぷちの方でも往こうものならきっと怪しいことにったので、歌妓げいしゃ達は姉さんのことばに従って、そんな晩にはあともどりであるけれども、築地橋の方に往き、それから今の電車通りを曲って
築地の川獺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「どんな方、カフェーの方、それとも歌妓げいしゃ衆」
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)