歌口うたぐち)” の例文
そう思いながら、それでもまだ、かえる道をむなしく歩いていくことはおしそうに、狛笛こまぶえをとって、その歌口うたぐち湿しめしはじめる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みぞれた井戸車の上に、何とも知れぬ花瓶かびんが載っていて、その中から黄色い尺八の歌口うたぐちがこのの邪魔をしている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
心なき門附かどづけの女の歌。それに興を催してか竜之助も、与兵衛が心づくしで贈られた別笛べつぶえの袋を抜く、氏秀切うじひでぎり伽羅きゃら歌口うたぐち湿しめして吹く「虚鈴きょれい」の本手。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なれた手つきで 歌口うたぐちしらべ
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
やさしく歌口うたぐちをお吹きなさい
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
細き金具かなぐ歌口うたぐち
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
咲耶子は、ゆうべのことで、苦悶くもんの色のかくせぬ中にも、それを見ると、ニッコとして、おびのあいだの横笛よこぶえき、しずかに、歌口うたぐちをしめしだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やさしく歌口うたぐちをお吹きなさい
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
そして、亡国ぼうこくの余煙をとむらわんとするのか、おがむように笙を持って、しずかに、その歌口うたぐちへくちびるをあてた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)