権兵衛ごんべえ)” の例文
「今朝権兵衛ごんべえ茶屋のとこで、馬をひいた人がそう云っていたよ。煙山の野原に鳥を吸いむ楊の木があるって。エレキらしいって云ったよ。」
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「おい、名なしの権兵衛ごんべえ、近頃じゃおつう高く留ってるじゃあねえか。いくら教師の飯を食ったって、そんな高慢ちきならあするねえ。ひとつけ面白くもねえ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次いで権兵衛ごんべえなるものが来て切替畑きりかえばたを作るようになると、権兵衛切、権爺作り、権ヶやぶなどの名が起ろう。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
居間と客間との間の建具をはずさせ、嫡子権兵衛ごんべえ、二男弥五兵衛やごべえ、つぎにまだ前髪のある五男七之丞しちのじょうの三人をそばにおらせて、主人は威儀を正して待ち受けている。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「じゃ、名なし権兵衛ごんべえ?」も一人の十六、七の瓢箪ひょうたんのような形の顔をした口先のませた女がいった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
伊那の谷からの通路にあたる権兵衛ごんべえ街道の方には、馬の振る鈴音に調子を合わせるような馬子唄まごうたが起こって、米をつけた馬匹ばひつの群れがこの木曾街道に続くのも、そういう時だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
毎日馬車に乗って、参謀の徽章きしょうを胸にかけて通った。不思議に子供も名前を知っていて、権兵衛ごんべえが来た来たと、口々にしめしあわせながら、先を争って帽子をとって頭をさげた。
大人の眼と子供の眼 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
誰やらが二葉亭を評して山本権兵衛ごんべえを小説家にしたような男だといった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
といって、つまらない権兵衛ごんべえ太郎兵衛たろうべえの娘を妻にはこれも嫌なり。
一名直助権兵衛ごんべえとも呼ばれた。
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
権兵衛ごんべえ街道から伊那へはいったことはありますが、こっちの方は初めてです。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)