桜実さくらんぼ)” の例文
旧字:櫻實
その前にバナナや桜実さくらんぼうづたかく盛つた果物屋の車が其れをかせて来た頸に綱を附けた三匹の犬と一人の老婆とにつて店を出して居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
卯木うつぎと一緒に、小丘のように盛り上がってい、その裾に、栗色の兎が、長い耳を捻るように動かしながら、蹲居うずくまってい、桜実さくらんぼのような赤い眼で、栞の方を見ていたが
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第一、どうして悪い天気があって、作物に害をするんだね? どうして、前の日に下すったものを、翌日取り上げておしまいになるんだね? 裏の畑の桜実さくらんぼも、おりゃ取り上げられた。
パスツウル研究所の創設者ルイス・パスツウルは名高い化学者だつたが、この人もモムゼンと同じやうに、どうかすると自分を忘れるたちであつた。ある時娘のうちに往つて、桜実さくらんぼばれた事があつた。
晶子は葡萄畑のあぜめぐつて色色いろいろの草花を摘んで歩いた。百姓の庭は薔薇ばらの花と桜実さくらんぼとの真盛まざかりである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
帽に附けてあつた桜実さくらんぼの赤さが何故なぜかいつまでも頭に残つた。夕雲と思つた美しい空の色が次第に藍気あゐけを帯びて来て鼠色の家の上の窓なども定かに見えなくなつて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)