某時あるとき)” の例文
某時あるとき木曾きそ御岳おんたけの麓へ往って、山の中で一夜を明し、朝の帰りいのししを打つつもりで、待ち受けていると、前方の篠竹がざわざわ揺れだした。
女仙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
某時あるとき、村で水莽の毒にあたって死んだ者があったが、死んで間もなく蘇生した。村の者はそれを不思議がった。すると祝が言った。
水莽草 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それはちょうど、ぼん精霊迎しょうりょうむかえのような行事であった。長年行商をして、諸国を歩いていたKが、某時あるとき私に此の話をした。私は好奇心を動かして
風呂供養の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
孫恪は某時あるとき、親戚の張閑雲ちょうかんうんという者の事を思いだして、久しぶりにその家へ往った。閑雲は孫恪の顔をつくづく見て
碧玉の環飾 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
某時あるときその事務員の一人であった支那人がしくじったので、すぐ解雇してそのあとへ新らしく事務員を入れたところで、数日してその事務員は来なくなった。
机の抽斗 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
芝公園大門わきに『わかもと』の本舗ほんぽがある。その『わかもと』の事務所は、寺院の一部であった。観相家かんそうかの松井桂陰けいいん君が某時あるときその『わかもと』の某君ぼうくんを訪問した時
商売の繁昌する家 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
また某時あるとき、来客があったので、兼五郎は奥座敷へ通して対手あいてになっていると、にわかに膝の下がむずむずして来た。何だろうと思って手をやってみると、古草履ぞうりが一つにょきりと出た。
唖の妖女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其の男は近江おうみから蚊帳を為入しいれて、それを上州じょうしゅうから野州やしゅう方面に売っていたが、某時あるとき沼田へ往ったところで、領主の土岐家ときけへ出入してる者があって、其の者から土岐家から出たと云う蚊帳を買って帰り
沼田の蚊帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
某時あるときわかい飛行士が
追っかけて来る飛行機 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)