村夫子そんぷうし)” の例文
村夫子そんぷうしふ、美の女性に貴ぶべきは、其面そのめんの美なるにはあらずして、単に其意そのこゝろの美なるにありと。なんぞあやまれるのはなはだしき。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかしだんだん彼らとつきあってみると、実に村夫子そんぷうしの中に高い人格をそなえた人が、いたる所にいるのを見て、心窃こころひそかに喜んでいる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
童学草舎どうがくそうしゃ村夫子そんぷうしも、武装すれば、こんなにも威風堂々と見えるものかと、眼をみはらせるばかりな雲長の風貌であった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっと狷介けんかいな闘志満々たる態度と、舌端火を吐く熱弁家だと思っていたが、見たところ恰幅はまるで村夫子そんぷうし然としているしその声調もひどく穏やかで
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
現在の四天王は六十がらみ、五十がらみの人たちであるが、いずれも見るからに村夫子そんぷうし。八十前後の老人が三人ほどイソイソと袋竹刀や木刀を振って道場に立つ。
馬庭念流のこと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かの溟濛めいもうたる瓦斯の霧に混ずる所が往時この村夫子そんぷうしの住んでおったチェルシーなのである。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実に面白い遣り方ですが、なおそれよりも奇妙なことを私はその辺の村夫子そんぷうしに聞きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
雲長は、よく子供らにもじまれていた。彼は、子どもらに孔孟こうもうの書を読んで聞かせ、文字を教えなどして、もう他念なき村夫子そんぷうしになりすましていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
向うから来た釜形かまがたとがった帽子をずいて古ぼけた外套がいとう猫背ねこぜに着たじいさんがそこへ歩みをとどめて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの村夫子そんぷうしのたたずめる前に出て来る。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やあ、髯長ひげなが村夫子そんぷうし、なんじ何とて柄にもなき威容を作り、武門のちまたに横行なすか。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)