李鴻章りこうしょう)” の例文
一通り町を遍歴した後、西村は私を倚陶軒いとうけん、一名大花園たいかえんと云う料理屋へつれて行った。此処は何でも李鴻章りこうしょうの別荘だったとか云う事である。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
李鴻章りこうしょうの前にき出されて気焔を吐くというような場面が主になっていて、他は新聞の戦争記事の切抜きのような、芝居らしくもないものであったが
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小指の爪をおそろしく長くのばしてあるあるじ李鴻章りこうしょうは、赤い房のついている水煙管みずぎせるをくわえながら、花梨卓かりんたくひじをついて、女の顔の白さに、眼をほそめてた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし彼はもう先達せんだっての掛物についてはまるで忘れているかの如くに見えた。李鴻章りこうしょうの李の字も口にしなかった。復籍の事はなお更であった。おくびにさえ出す様子を見せなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明るい黄緑な色の海は後方うしろにして出て来た故国の春の方へ岸本の心を誘った。彼は上海の方で見て来た李鴻章りこうしょう故廟こびょうに咲いた桃の花がそこにも春の深さを語っていたことを胸に浮べた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
陸軍に於ても彼には李鴻章りこうしょうの部下に属し、洋式に訓練されて精鋭の聞えあった直隷軍ちょくれいぐんをはじめとし、兵数は甚だ多く器機も最新のものを用いたが、我にはただ七個師団あり、それも今日とは違い
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
何はさて置き老大政府を根絶やしにして仕舞しまって、ソレから組立てたらば人心こゝに一変することもあろう。政府に如何いかなるエライ人物が出ようとも、百の李鴻章りこうしょうが出て来たって何にも出来はしない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
英国女皇ほうず八十余歳。李鴻章りこうしょう逝く七十余歳。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
で、そんな関係から、妾のお光さんは、南京街の李鴻章りこうしょうの地下室も愚連隊の巣にしてしまい、此店ここの地底倉庫も、みんなとの会合場所に利用する特権をもっている。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは昨年の「日清戦争」でも李鴻章りこうしょうをつとめて好評であったが、不思議にシナ人の悠揚迫らざる態度がその芸風に適して、今度の丁汝昌は書生芝居の団十郎であるとまでに賞讃された。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
李鴻章りこうしょうの書は好きですか」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ことによると、李鴻章りこうしょうが、首をくくるかも知れない」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)