有無ありなし)” の例文
獲物の有無ありなしでおもしろ味にかわりはないで、またこの空畚からびくをぶらさげて、あしの中を釣棹つりざおを担いだ処も、工合のい感じがするのじゃがね。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日本車輛製造の原田勘七郎氏……といつたやうに、卒業証書の有無ありなしなぞもう気に懸けないでもいゝやうな顔触ばかりになつた。
鼓賊と呼ばれるその泥棒が、少納言の鼓を奪い取ったのは、その鼓を奏する事によって、目星をつけた家々の、金の有無ありなしを知るためだったのか。盗みも進歩したものだな。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのあとで茶をれて四方八方よもやまの話から、幽霊の有無ありなしの話をしましたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしてのひらけさせて、ころりとつてせたのは、わすれもしない、双六谷すごろくだにで、夫婦ふうふ未来みらい有無ありなしかけやうとおもつてつたさいだつたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひげ有無ありなし9・10(夕)
その頃は外套がいとうの襟へ三角なり羅紗らしゃ帽子を、こんな時に、いや、こんな時に限らない。すっぽりと被るのが、寒さを凌ぐより、半分は見得で、帽子の有無ありなしでは約二割方、仕立上りの値が違う。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)