有付ありつ)” の例文
土地の子供の煩さかったことは、葡萄棚に近く窓のある食堂で岸本等が楽しい夕飯に有付ありついた時にも石垣の外から覗きに来るものがあるくらいであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
オマンマに有付ありつくか、付かないかの境い目だ。行くところまで行ってみろ。こっちで気を付けて用心をしていたら、万一の場合でも怪我けがぐらいで済むだろう。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御自分の父を打って松江表を立ち退き、その後諸国にて身上を稼ぎ申したが、人を殺したむくいは覿面てきめんじゃ。いずこにても有付ありつかたなく、是非なく出家いたしたのじゃ。
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
空氣がにごツてゐるばかりならいが、其の空氣を吸ツてきてゐる人間はみなにごツてゐる………何しろ二百まんからの人間が、せま天地てんちに、パンに有付ありつかうと思ツて盰々きよと/\してゐるんだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
作り高は村内の者に都合よく分け持たせ、後々のちのち再び有付ありつかせ候様そうろうよう
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)