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曉
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あかつ
占しは江戸四宿の内只此品川のみ然れば
遊客も
隨つて多く彼の吉原にもをさ/\
劣らず
殊更此地は海に
臨みて
曉きの
他所よりも早けれど
客人は
後朝を
もさゝず
濡萎たれて
跣とは其の意を得ずと思ひしに跡にて
聞ば
弟なる十兵衞とやら云者が札の辻にて人手にかゝり其
曉きに長庵は病氣なりとて十兵衞が出立するを
見て
流石の長庵
少しく
顏色變りしかば越前守殿
最徐かにいざ長庵夫に
居る忠兵衞こそ彼の日の
曉きに其方に
逢し趣きなりと云はれしに長庵は忠兵衞を
尻目に
掛恐れ
乍ら申上候何者が
斯る事を