きのふ)” の例文
今尚ほきのふの如く覺ゆるに、わきを勤めし重景さへ同じ落人おちうどとなりて、都ならぬ高野の夜嵐に、昔の哀れを物語らんとは、怪しきまでしき縁なれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
われは生涯その時の事を忘れず。父の燒け殘りたる葡萄を摘みてわれに食はせしは、今も猶きのふのごとしと云ひぬ。
母の膝下しつかにて過す精進日せじみびは、常にも増してたのしき時節なりき。四邊あたりの光景は今猶きのふのごとくなり。街の角、四辻などには金紙銀紙の星もて飾りたる常磐木ときはぎ草寮こやあり。
我好古のまなこもて視るときは、是れ猶いにしへのリリス河にして、其水は蘆荻ろてき叢間の黄濁流をなし、敗將マリウスが殘忍なるズルラに追躡ついせふせられて身を此岸に濳めしも、きのふごとくぞおもはるゝ。