昔年せきねん)” の例文
昔年せきねんの涼味をしのぶに過ぎなかったが、わが国に帝国議会というものが初めて開かれても、ここの柳は伐られなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昔年せきねん、馬に乗れば切捨てられたる百姓町人の少年輩が、今日借馬に乗て飛廻わり、誤って旧藩地の士族を踏殺すも、法律においてはただ罰金の沙汰あらんのみ。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしてこういうことを聞いた。富士川さんは昔年せきねん日本医学史の資料を得ようとして、池田氏の墓にもうでた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
た当年の苦艱くかんかえりみる者なく、そが細君すらもことごとく虚名虚位に恋々れんれんして、昔年せきねん唱えたりし主義も本領も失い果し、一念その身の栄耀えいよう汲々きゅうきゅうとして借金賄賂わいろこれ本職たるの有様となりたれば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
かくて和蘭王は、昔年せきねん交誼こうぎよりして、弘化元年使節をつかわし、世界の大勢をつまびらかにし、鎖国の長計にあらざるを説き、和親通交のむべからざるを告げたりき。しこうして我は何を以てこれに答えたる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)