クラ)” の例文
空は愈々青澄み、クラくなる頃には、藍の様に色濃くなつて行つた。見あげる山の端は、横雲の空のやうに、茜色アカネイロに輝いて居る。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
クラぐらと 山の空より淡雪のまひつゝ、なほぞ 汽車カヒに入る
鵠が音:01 鵠が音 (新字旧仮名) / 折口春洋(著)
「衆人熙々トシテ大牢ヲ享クルガ如ク、春、臺ニ登ルガ如シ。我獨リ怕兮トシテ、嬰兒ノ未ダワラハザルガ如ク、ツカレテ歸スル所ナキガ如シ。俗人昭々トシテ我獨リクラキガ如ク、俗人察々トシテ我獨リ悶々タリ。……」
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
狂言記あたりに見える「晩ずる」といふ動詞は「夜になる」の意としか解かれてゐぬが「クラくなる」位の意であらう。
方言 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
併しもう一代古い処では、とこよが常夜トコヨで、常夜トコヨく国、闇かきクラす恐しい神の国と考へて居たらしい。常夜の国をさながら移した、と見える岩屋戸ゴモりの後、高天原のあり様でも、其俤は知られる。
妣が国へ・常世へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)