“敵(あいて)” の例文
米は鍵屋あって以来の上客を得た上に、当の敵(あいて)の蔵屋の分二名まで取込んだ得意想うべく、わざと後を圧(おさ)えて、周章(あわ)てて胡乱々々(うろうろ)する蔵屋の女(むすめ)に、上下(うえした)四人をこれ見よがし。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ト、敵(あいて)を追って捕えよう擬勢も無く、お千世を抱いて、爺さんの腰を抜いた、その時、山鳥の翼を弓に番(つが)えて射るごとく、颯(さっ)と裳(もすそ)を曳(ひ)いて、お孝が矢のように二階を下りると思うと
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下駄じゃあねえか、下駄じゃあねえか、串戯(じょうだん)じゃあねえ、何を面啖(めんくら)ったか知らねえが、そいつを懐に入れるだけの隙(ひま)が有りゃ、敵(あいて)の向脛(むこうずね)をかッぱらって遁(に)げるゆとりはありそうなもんだぜ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)