数珠じゆず)” の例文
旧字:數珠
と、女の肌に頸から吊してあつた細い黒檀の数珠じゆずとその先きにぶら下つてゐる銅貨のやうなものがちらりと見えた。
そのとき和尚さんが門のうちから走り出して、何やらお経を読みながら悪魔の頭を数珠じゆずで打ちますと、悪魔の姿はけむのやうになつて、消えてしまひました。
豆小僧の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
卓子テエブルに伸上る)はは、いかさま、いや、若様。あれは水晶の数珠じゆずにございます。海に沈みまする覚悟につき、冥土めいどに参る心得のため、檀那寺だんなでら和尚おしょうが授けましたのでござります。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にもにも三十八年間の罪業過失の懺悔ざんげをしたいところであるんだが、——の間演伎座で中車ちゆうしや錨知盛いかりとももりを見たが、弁慶が出て来て知盛の首に数珠じゆずを投げかけたところ、知盛憤然として
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
深いひげの中に明るく眼をかゞやかし、破れた僧衣ころもに古い袈裟けさをかけ、手に数珠じゆずを持つたかれの前には、二十八九になる一目見て此処等に大勢ゐる茶屋女だとわかる女が、眼に涙を一杯に溜めて
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まぶしげに数珠じゆずふりかざしいそげども
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
数珠じゆずを持つてゐたならば、それをつて、幼い時に覚えたお経の一節をしたいと思ふほどであつた。そしてその渇仰の念に雑つて、昔の幼かつた時分のことが、美しくいろどられた絵になつて見えた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
慈眼じがんめぐらし数珠じゆずりて
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
。かう言つて女は手を合せて数珠じゆずを繰つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)