擬宝珠ぎぼうし)” の例文
旧字:擬寶珠
さんとして馬いなゝかず、この間の花は、磧撫子かはらなでしこ蛍袋ほたるぶくろ擬宝珠ぎぼうし、姫百合、欵苳ふき、唐松草等にして、木は百中の九十まで松属まつぞくの物たり。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
お兼は立去りあえずかしらを垂れたが、つと擬宝珠ぎぼうしのついた、一抱ひとかかえに余る古びた橋の欄干に目をつけて、嫣然えんぜんとして、振返って
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よろめく身をささえるはずみに、なにか冷たい金属の肌が手にふれた。それは階段の上の擬宝珠ぎぼうし柱であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
も見るかげがなくはげて、抜けかかった屋根がわらの上に擬宝珠ぎぼうしの金がさみしそうに光っていた。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たちまち境内のお寺は残らずからッぽとなり、金属かねけのものは勾欄こうらんの金具や、擬宝珠ぎぼうしの頭などを奪って行くという騒ぎで、実に散々なていたらく……暫くこの騒ぎのまま、日は暮れ、夜に入り
「両国ですよ、間違いはありません。擬宝珠ぎぼうしの形で解りまさア」
ことにその橋の二、三が古日本の版画家によって、しばしばその構図に利用せられた青銅の擬宝珠ぎぼうしをもって主要なる装飾としていた一事は自分をしていよいよ深くこれらの橋梁を愛せしめた。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今年、四月八日、灌仏会かんぶつえに、お向うの遠藤さんと、家内と一所に、麹町こうじまち六丁目、擬宝珠ぎぼうし屋根に桃の影さす、真宝寺の花御堂はなみどうもうでた。寺内に閻魔堂えんまどうがある。遠藤さんが扉を覗いて、袖で拝んで
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)