はた)” の例文
貞之進が黒の羽織を着て居るのに心附き、あなたのことではありませんよと、はたいた烟管きせるをふっと吹き、昨宵ゆうべも逢た癖にと婢が云うのをきかぬふりで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
二ツ三ツ頭をはたいた末、筑阿弥は彼よりも何倍もまさった力で、日吉の体を吊し上げ、わが家のほうへ駈けて行った。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嬉いのうと悦んで其儘戸外おもてへ駈け出し、珍らしう暖い天気に浮かれて小竿持ち、空に飛び交ふ赤蜻蜓あかとんぼはたいて取らうと何処の町まで行つたやら、嗚呼考へ込めば裁縫しごとも厭気になつて来る
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
売るお何どんの注進ちぇッと舌打ちしながら明日あしたと詞つがえて裏口から逃しやッたる跡の気のもめ方もしや以前の歌川へ火が附きはすまいかと心配ありげにはたいた吸殻
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
嬉しいのうとよろこんでそのまま戸外おもてへ駈けいだし、珍らしゅう暖かい天気に浮かれて小竿こざお持ち、空に飛び交う赤蜻蜓あかとんぼはたいて取ろうとどこの町まで行ったやら、ああ考え込めば裁縫しごとも厭気になって来る
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ちっとでも、怠けていたり、悪戯いたずらでもしていようものなら、筑阿弥の大きな手は、すぐ日吉の顔をはたいた。日吉は、嫌でたまらなかった。仕事よりも、義父ちちの眼から少しの間でものがれていたかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)