ひき)” の例文
平次はたすきを外して、火のない長火鉢の前へ來ると、煙管の雁首がんくびを延ばして、遙か彼方のひき物細工の貧乏臭い煙草入を引寄せるのでした。
これをしないのはわずか数人を出ない資産家か、反対に日傭取ひようとりや馬車ひきなどに限られている。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
「勲八等、功八級」の父に、一時金百五十円の金が、おかみからさがった。凱旋早々から日傭稼ひやといにもあまり出られないでいた父は、その金を資本にして荷馬車ひきを始めることにした。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
おらア此の通り姿を変えて人力ひき、何んでも手前てめえが上州路に居ると聞いたから、草津か、沢渡か、伊香保にでも居るかと思って居たのよ、しかおれあぶねえ身の上だが、渋川へ来て車夫になって
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)