打瞶うちまも)” の例文
『聞いたす。』と穩かに言つて、お八重の顏を打瞶うちまもつたが、何故か「東京」の語一つだけで、胸が遽かに動悸がして來る樣な氣がした。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
まさにこのときともかたあらわれたる船長せんちょうは、矗立しゅくりつして水先を打瞶うちまもりぬ。俄然がぜん汽笛の声は死黙しもくつんざきてとどろけり。万事休す! と乗客は割るるがごとくに響動どよめきぬ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『聞いたす。』と穏かに言つて、お八重の顔を打瞶うちまもつたが、何故か「東京」のことば一つだけで、胸がにはかに動悸がして来る様な気がした。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二人は暫しかたみの顔を打瞶うちまもつてゐたが、『でヤ、明日盛岡さがねばならねえな。』と、お定が先づ我に帰つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、其麽所から此人はまあ、どうして此処まで来たのだらうと、源助さんの得意気な顔を打瞶うちまもつたのだ。それから源助さんは、東京は男にや職業が一寸見付みつかにくいけれど、女なら幾何いくらでも口がある。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)