打枯うちから)” の例文
水馴棹みなれざおを取落さぬばかりに驚いて、「あっ!」と舌を捲かしめた先方の人影というものは、よく見る尾羽おは打枯うちからした浪人姿で、編笠をかぶって謡をうたったり
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
貴方はなんたるお方かなア、大金を人に恵むに板の間へ手を突いて、失礼の段は詫ると云う、誠に千万かたじけのうござる、只今の身の上では一両の金でも貸人かしてのない尾羽おは打枯うちからした庄左衞門に
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
学生たりし荒尾! 参事官たりし荒尾‼ 尾羽をは打枯うちからせる今の荒尾の姿は変りたれど、なほ一片の変らぬ物ありと知れる貫一は、夢とも消えて、去りし、去りし昔の跡無き跡を悲しとしのぶなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いはれたものかソレ貴殿おまへが幸手の町へ來たときは尾羽をは打枯うちからした素浪人すらうにんくふくはずの身を可愛相かあいさうだと云て穀平では始終しじう世話を成れおや同前どうぜんに大恩をうけた其平兵衞さんさへ殺す程の大惡人兄弟ぶんぐらゐわたしの夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)