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打揚
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うちあ
実に
匂も
零るるやうにして彼は
浪に漂ひし人の今
打揚げられたるも
現ならず、ほとほと
力竭きて
絶入らんとするが如く、
止だ
手枕に横顔を支へて、力無き
眼を
瞪れり。
「と……まあ見えるでございます、
亡骸が岩に
打揚げられてござったので、
怪我か、それとも覚悟の上か、そこは
先ず、お
聞取りの上の御推察でありますが、私は
前申す通り、この歌のためじゃようにな、」
夫は出でて
未だ帰らざれば、今日
若し
罵り
噪ぎて、内に
躍入ることもやあらば
如何せんと、前後の
別知らぬばかりに
動顛して、取次には婢を
出し
遣り、
躬は
神棚の前に
駈着け、
顫声を
打揚げ