打揚うちあ)” の例文
にほひこぼるるやうにして彼はなみに漂ひし人の今打揚うちあげられたるもうつつならず、ほとほと力竭ちからつきて絶入たえいらんとするが如く、手枕てまくらに横顔を支へて、力無きまなこみはれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「と……まあ見えるでございます、亡骸なきがらが岩に打揚うちあげられてござったので、怪我けがか、それとも覚悟の上か、そこはず、お聞取ききとりの上の御推察でありますが、私はぜん申す通り、この歌のためじゃようにな、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫は出でていまだ帰らざれば、今日ののしさわぎて、内に躍入をどりいることもやあらば如何いかにせんと、前後のわかれ知らぬばかりに動顛どうてんして、取次には婢をいだり、みづから神棚かみだなの前に駈着かけつけ、顫声ふるひごゑ打揚うちあ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)