打俯うちふ)” の例文
宮はかたはらに人無しと思へば、限知られぬ涙に掻昏かきくれて、熱海の浜に打俯うちふしたりし悲歎なげきの足らざるをここにがんとすなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おずおずその袂をきて、惻隠そくいんこころを動かさむとせり。打俯うちふしたりし婦人おんな蒼白あおじろき顔をわずかにもたげて
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貫一はあやしみつつも息を潜めて、なほ彼のんやうを見んとしたり。宮は少時しばしありて火燵に入りけるが、つひやぐら打俯うちふしぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
宮はその人ののがれ去りしこそたのみの綱は切られしなれと、はや留るべき望も無く、まして立帰るべき力は有らで、罪のむくいは悲くも何時まではかなきこの身ならんと、打俯うちふし、打仰ぎて、太息ためいきくのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)