手酷てきび)” の例文
これは神仏混淆の例証ではありませんが、やはり神仏区別のお布令ふれからして仏様側が手酷てきびしくやられた余波から起った事柄であります。
……それがさながらに悪魔の智慧ちえで計劃された復讐のように残酷な、手酷てきびしい時機と場面を選んで来た事はトテモ偶然と思えない。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すでにその半兵衛重治は、一度主君をこの城から追うほどな手酷てきびしい諫言かんげん……ではなく実行をもって、龍興をらしめている。そして龍興を迎えて、城を返すと共に
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝馬町の揚屋あがりやに入れて手酷てきびしく調べ詰めたが、どうしても自分が殺したとは言わない。
「訊き方が少し手酷てきびし過ぎるね。なんぼ僕だってまだ泥棒はしないから安心してくれ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてその頃、私は妻からもまたマジャルドーに優るとも劣らぬ手酷てきびしい厳談を受けていたのであった。お客を迎えるのに今のような召使の制度では、まったく家格というものがない。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「満洲に這入ると直ぐに憲兵司令に命じまして、彼奴きゃつを国境脱出者と見做して手酷てきびしく責めてみましたが、弱々しいじじいの癖にナカナカ泥を吐きません」
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
へいが倒れ、寺や神社の大樹が折れなどして大あらしの後の市中は散々の光景で、私宅なども手酷てきびしくやられました。
「……これは手酷てきびしい」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つにはその記者の感情を害すると、どこかで手酷てきびしい報復をされる事を、一同が恐れているせいでもあったろう。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さりながら、時代は前に述べた通り、仏さまに対しては手酷てきびしくやられたものであるから、さながらに仏法地につるという感がありました。で、このお寺を維持保存するなどは容易のことではない。