旧字:戰
戦さのすんだ今こそ昔通りの生活をあたりまへだと思つてゐるけど、戦争中はこんな昔の生活は全然私の頭に浮んでこなかつた。
腹が空っては戦さが出来ぬ。戦さをしなくなった日本に、腹が空ることだけを残してくれたのは悲劇だろうか。そんなら、なにを食べても美味しくはないという金持の生活は喜劇か。
「戦さを進めて国内改造をしようというのが、君たちの倒さねばならんとする軍閥の考えだ。君たちは何よりもまず、天皇陛下に帰一し奉る国内改革こそが大事だという意見だったのではないか」
国がこんだけの戦さしているんだ、戦争に出て——すると、遺族扶助料だってもらえるから……とても、この悲壮な気になって——会社の友だちやなんかに送られて出かけたんですがね——したら