いく)” の例文
旧字:
いくさのすんだ今こそ昔通りの生活をあたりまへだと思つてゐるけど、戦争中はこんな昔の生活は全然私の頭に浮んでこなかつた。
続戦争と一人の女 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「重くはないさ。」と、鬚があり口のかたちがある鉄の面の上で重い作り声がした。「だけど俺には之を着ては到底いくさは出来さうもない。」
籔のほとり (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
腹が空ってはいくさが出来ぬ。戦さをしなくなった日本に、腹が空ることだけを残してくれたのは悲劇だろうか。そんなら、なにを食べても美味しくはないという金持の生活は喜劇か。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
いくさを進めて国内改造をしようというのが、君たちの倒さねばならんとする軍閥の考えだ。君たちは何よりもまず、天皇陛下に帰一し奉る国内改革こそが大事だという意見だったのではないか」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
国がこんだけのいくさしているんだ、戦争に出て——すると、遺族扶助料だってもらえるから……とても、この悲壮な気になって——会社の友だちやなんかに送られて出かけたんですがね——したら
胎内 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
いくさの見物をさしてやるからと云ったぎり満州へ渡ったんだがね。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上野のいくさが始まると、その病はこうじるばかり、毎日目の色を
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
いくさの支度をする。呪ひがかかるのだ