成経なりつね)” の例文
旧字:成經
が、忌々いまいましさを忘れるには、一しょに流された相手が悪い。丹波たんばの少将成経なりつねなどは、ふさいでいなければ居睡いねむりをしていた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
康頼も成経なりつね俊寛しゅんかんも、一年間の孤島生活で、その心も気力も、すっかり叩きのめされてしまっていた。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
丹波少将成経なりつねは、その夜、院の御所の宿直で、まだ家には帰っていなかった。そこへ、大納言の家来が、急を知らせにかけつけてきた。始めて、事の子細を知った少将の驚きも深かった。
成経なりつね様や康頼やすより様が、御話しになった所では、この島の土人もおにのように、なさけを知らぬ事かと存じましたが、——」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
成経なりつね様御一人だけは、御妻子もあったそうですから、御まぎれになる事もありましたろうに。」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
丹左衛門尉基康たんのさゑもんのじやうもとやすは、俊寛成経なりつね康頼等やすよりら三人の赦免状しやめんじやうを携へてゐる。が、成経なりつねの妻になつた、島の女千鳥ちどりだけは、舟に乗る事を許されない。正使せいし基康もとやすには許す気があつても、副使の妹尾せのをが許さぬのである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
附記 盛衰記に現れた俊寛は、機智に富んだ思想家であり、つるまへを愛する色好いろごのみである。僕は特にこの点では、盛衰記の記事に忠実だつた。又俊寛の歌なるものは、康頼やすより成経なりつねよりつたないやうである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)