懸巣かけす)” の例文
懸巣かけすさん、こんちは。……なかなかお愛想がいいわね。……あんた、ひとりで、淋しいのね。それで、遊んでほしいのでしょう?」
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
谷に近い森の奥では懸巣かけすしきりに鳴いています。鸚鵡おうむのように人の口真似をする鳥だとは聞いていましたが、見るのは初めてです。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何時か懸巣かけすのことを本紙で書いたことがあるが、その後の彼女の真似声まねごえは一層種々につかい分けをして、殆ど、かぞえ切れないくらいである。
懸巣 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
北沢の上流では黒木立の中でうそが頻りに鳴いていた。いつか此処ここで鷹の捕えた懸巣かけすを奪い取ったことを思い出す。快晴なので朝から日ざしが暑い。
向こうの大きな白山茶花の枝々を揺がせて、葡萄いろをした懸巣かけすが一羽おどろいたように飛び立っていった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ときには懸巣かけすの美しい色の羽毛がそこから散り込んで来ることさえあった。
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
口授くじゆしつつうしろ寒けき短日たんじつ懸巣かけすは飛びてするどかりしか
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
懸巣かけすが林で啼いている。野の草が風に靡いている。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……離屋はなれの悦二郎の書斎へでも行って見なさい。懸巣かけすがいてね、それが、よく馴れて面白いことをする……光るものを投げてやると、くちばしでヒョイと受けるよ
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
サヤサヤという羽音はおとといっしょに、一羽の小鳥が窓から飛び込んできて、書机デスクのそばの止まり木にとまった。背中が葡萄色で、つばさに黒と白の横縞よこじまのある美しい懸巣かけすである。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)