愚昧おろか)” の例文
こうなれば最早もはや、致し方もない。僅か一年の間に大金を作ろうなぞと約束したのがこっちの愚昧おろかであった。浮世の風に吹きさらされてみればわかる。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼も全く自己おのれを押へて譲れば源太も自己を押へて彼に仕事をさせ下されと譲らねばならぬ義理人情、いろ/\愚昧おろかな考を使つて漸く案じ出したことにも十兵衞が乗らねば仕方なく
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
本船ほんせん愚昧おろかなる船長せんちやうは『船幽靈ふないうれいめが、難破船なんぱせん眞似まねなんかして、このふね暗礁あんせうへでも誘引おびせやうとかゝつてるのだな。』と延氣のんきことつてつたが、其實そのじつ船幽靈ふないうれいならぬ海賊船かいぞくせん
……その自縄自縛を切り抜けている一人二役式の思い付きの非凡さ……MとWの使い分けの大胆さ、巧妙さ……そうして、やはりもとの自縄自縛に陥ってしまっているそのミジメさ……愚昧おろかさ……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)