悪沢わるさわ)” の例文
これは昨日見た悪沢わるさわ岳だ。更に上り上って、終に一里あまりも来て、大きな山毛欅ぶなを前景に、三、四時間ばかり一生懸命に写生をした。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
針木岳の厩窪まやくぼ等は尤も顕著なものであり、南アルプスでは仙丈岳の頂上に二個、悪沢わるさわ岳の西の尾根上に二個あって、共に標式的のものである。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
悄気しょげた顔はどこにもない、油紙は人夫どもに処置させて、先刻げ込んだばかりの、白河内岳の頂上に立って、四方を見廻した、南の方、直ぐ傍近く間の岳(赤石山脈)と、悪沢わるさわ岳がけわしく聳えて
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
また南アルプスで最も起伏の多い部分は、赤石岳を中心として北は悪沢わるさわ岳から南はひじり岳に至る延長一、二キロの間であるが、少し無理をすれば十二座は数えられる。
南北アルプス通説 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
農鳥のうとりでもない、大井川をえて赤石あかいしが見えるのかとも思った。後に聞いたら赤石山系の悪沢わるさわ岳であった。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
これから考えると農鳥のうとりの池や悪沢わるさわの池などを探ったならば、或は更に最高記録の保持者として、ヒノビウス・ニグレセンスなどが発見されるかも知れないと思う。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
富士は更なり遠い赤石山脈の悪沢わるさわ岳や荒川岳(塩見岳)の七月上旬に於ける残雪は、恐らく含雪斎の主人公をして、西嶺千秋雪の感を深からしめたことであろうと思う。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
悪沢わるさわの三山を含む連峰へは、三十四、五年頃まで講中の信徒が相当に登山したものであるという。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あいノ岳、続いて仙丈岳、荒川岳(塩見岳)、悪沢わるさわ奥西河内おくにしこうち(西河内および無河内)、赤石、ひじり、大沢、兎などが見え、木曾駒山脈の半以南は雲に掩われていたが、御岳はよく見えた。
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
遠い山は大方雲に包まれてしまったが、悪沢わるさわ岳や塩見岳の巨体は紛る可くもない。
「ヤアさかんだな、オイ悪沢わるさわ悪沢、ひじり上河内かみこうち、アリャざるさ、ワッハッハッハッ」
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)