悪智慧わるぢえ)” の例文
旧字:惡智慧
「全くそうじゃ」老翁は白髯はくぜんふるわしながら答えるのだ。「これからは悪智慧わるぢえのある奴が益々増えるから、脅迫は増える一方じゃのう」
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ただ少しばかり感心しているところは偉い方のおいでを利用して事件を当局者の手で揉消もみけしてしまう、そうした犯人の悪智慧わるぢえです
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
しかるに先生は教うるにいかなる事をもってしたのであるか、まさかに悪智慧わるぢえを着けはしまい。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
川島はにやりと笑ったと思うと、たちまち小栗を懐柔かいじゅうした。保吉はいまだにこの少年の悪智慧わるぢえの鋭さに驚いている。川島は小学校も終らないうちに、熱病のために死んでしまった。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この話を読んで、わたしは江戸時代にもそれとほとんど同様の事件のあつたことを思ひ出した。犯罪者も所詮はおなじ人間であつたから、その悪智慧わるぢえ大抵たいていはおなじやうに働くのであらう。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
世界が暗くなってしまう。察するところ、お母さんから悪智慧わるぢえを附けられて、妙に自信を得たのだろう。お母さんは、あれで、なかなか理論家だからね。いまに、パウロの罰を受けるぞ。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
何百両という金をめるのは一生かかっても難しいことと、一平が悪智慧わるぢえを出して、醤油賭をやるようになってから、お咲も、自分の体を犠牲にえにしてもという気で夜鷹に身を落したが、実は
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抱えに悪智慧わるぢえをつけるばあやも、もういなくなり、銀子は仕込みをつかって、台所をしているのだったが、大抵のことは親爺おやじが自身でやり、シャツ一枚になって、風呂場ふろばの掃除もするのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それがあの方達の悪智慧わるぢえでごぜえますよ。
そこはね、性理上も斟酌しんしゃくをして、そろそろ色気が、と思う時分には、妹たちが、まだまだ自分で、男をどうのこうのという悪智慧わるぢえの出ない先に、親の鑑定めがねで、婿を見附けて授けるんです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(上手の障子をあけて、台所に降りて障子をしめ、あとは声のみ)このごろはどうして、なかなか悪智慧わるぢえが附いてね、おんりして歩かないかって言えば、急に眠ったふりなんかしてさ、いやな子だよ。
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)