ゆっく)” の例文
ゆっくりした歩きぶりで、印いりの傘をさして、……彼だということはすぐにわかった。おなつは息をつめ、自分の前を通ってゆく彼の姿をじっと見まもった。
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「兎に角、僕は電話をかけて来るよ。何、未だ望みはあるよ。支倉に悟られて終った訳じゃないんだから。鳥渡待っていて呉れ給え。ゆっくり対策を講じよう」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
妾は忙しゅうごぜえましてな、どうぞごゆっくり、ハイそれでは。……薬草を取らなければなりましねえ
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その洋画や飾棚が、向島へ引移る時、永井と云う悪執事にちょろまかされたが、その永井も数年後、何者かに浅草で殺された事など、まさ子はゆっくり、楽しそうに語った。
白い蚊帳 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
律氏もそれはよく承知しているんです……ただこの少爺わかだんなは書斎の理想家ですからな……時に、どうです皆さん、爆撃でもされては、もうゆっくりする晩はないでしょうから
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
つけてお帰りなさいね。お宅はモルトン町だそうですから、そんな遠い所から、わざわざ出直していらっしゃらないでもよろしゅうございますわ。お宅へ帰ってゆっくりお休息やすみなさい
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
夫だから何うか此の家へ呼び寄せてゆっくり諭し度いと思い、色々考えて見ましたが、夫には顔形を以て威かすに限る、無名で以てアノ顔形を送りさえすれば、秀子は自分の身の弱点を思い出し
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ええ御ゆっくりと。……でもあまり遅くなりますと心配ですから。」
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
おなつは痛むのをがまんして、男のゆっくりした大股おおまたに小走りでついていった。
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ゆっくりお読みなさい。今日は事務所へ出なくてもいゝでしょう」
もう少しゆっくりしていれば彼女の直ぐ後から
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)