御師おし)” の例文
内証ながら、山田の御師おし何某なにがしにひかされて、成程、現に師匠をしている、が、それは、山田の廓、新道の、俗に螢小路と云う処になまめかしく、意気である。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明藤開山めいとうかいざん、藤原角行かくぎょう(天文十年—正保三年)が開拓して、食行身禄じきぎょうみろく(寛文十一年—享保十八年)が中興した登山口だけあって、旧御師おし町らしいと思わせる名が
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
既に数日前から山上三十六軒の御師おしの家に陣取って、手ぐすね引いて今日の日を待ち構えている有様です。
源右衞門は講の積み金を持つて出たのだけれど、それは今までの旅籠賃はたごちんと、御師おしへの禮物と、太神樂の奉納とに、あらかた使ひはたして、幾らも殘つてはゐない。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
山麓三夜沢みよざわに在る赤城神社に詣で、御師おしの家に一泊し、御供米として白米一升及び若干の賽銭を納め、其夜は餅を振舞われ、翌朝御札を授かって帰村するのである。
山と村 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それも本社の允許いんきょを受くることを必要とし、かつ事触の名を改めて、御師おしうことにしたとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
よろしい。しつかりたまへ。」これは安田図書やすだづしよの声である。外宮げぐう御師おしで、三十三歳になる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と豊後介は言って、姫君に八幡詣やわたまいりをさせた。八幡のことにくわしい人に聞いておいて、御師おしという者の中に、昔親の少弐が知っていた僧の残っているのを呼び寄せて、案内をさせたのである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いただきの雪にしたしく煙あげて群ゐる屋根見ゆ御師おしの家かも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
荒村行をするに恰好かっこうな題目であったが、まだしも白衣の道者も来れば、御師おしも数軒は残っていたが、今度来て聞くとかなしいかな、村山では御師の家も退転してしまい
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
竜太夫という御師おしのところへ行って、江戸品川宿の青物屋大阪屋のうちより抜参りに来たが、かくの次第ゆえ泊めてくれろと言うがいい、そうすると向うで帳面を繰りて見て泊めると教えてくれた故
最後には自然と御師おしもとへ辿り着くようになっていました。
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)