御寝ぎょしん)” の例文
旧字:御寢
「火がしずまってから、御寝ぎょしんなされたお茶室と思われるあたりに、壺をいだいた一つの黒焦げの死体が、現われましたが」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「夜明けのせいか、めっきり冷えが増して参ったように厶ります。お微行しのびのあとのお疲れも厶りましょうゆえ、御寝ぎょしん遊ばしましてはいかがで厶ります」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「まだ、御寝ぎょしんにはなりません様子、とにかく御来訪、お伝えだけは、申上げることにいたしましょう」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
よく御寝ぎょしんなっていらっしゃいますから、おおこし申しましては誠に恐入りますが、少し気になることを向座敷で噂をしております、ほかの者の話はうそのように存じますが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何か怪しいことでもないのか、上様が御寝ぎょしんなされる時刻とか、お起き遊ばされる時刻とかに」
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
幕府にあっては、内憂外患のとき、当一ツ橋様におかれては、御大老井伊掃部頭いいかもんのかみ殿の刺殺しさつせられた後をうけて、将軍家のご後見となり、幕政御改革に、夜も、安らかに、御寝ぎょしんなされぬとれ承る。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
団扇うちわ使いは御寝ぎょしんの妨げと差控え、その代り名香をふんだんに、蚊遣り火の如く焚くのは怠らなかった。それも併し、時の過ぎるに従って、昼間のつかれに二人とも、居眠りせずにはいられなかった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
御寝ぎょしん遊ばし成されましょうと行け」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今この御寝ぎょしんの間に額を集めているのは、八代将軍吉宗様を中に、天下ごめんの垢すり旗本愚楽さんと、今をときめく南のお奉行大岡忠相の三人のみ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
是は将軍様のお居間にはくあることで、これは間違いの無いようにというのと、今一つは湿しっけて宜しくないから、二重に遊ばした方が宜しいと二重畳にして御寝ぎょしんなる事になる。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なんの、余りのよろこばしさに、私こそ、御寝ぎょしんの時刻もわきまえず……」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上段の間に御寝ぎょしんなされた吉宗公は、うつらうつらとして夢路にはいろうとしていた。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「殿さまには、御寝ぎょしんなされました……お静かに」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
納戸なんど坊主が、閉口頓首へいこうとんしゅして、御寝ぎょしんの間のお雨戸をソロソロ繰りはじめる、そのとたんを見すまし、つまり、お坊主の手が雨戸にかかるか掛からないかに、おそば小姓がお眼覚めを申し上げるのです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
御寝ぎょしん、ご一ぷく
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)