御厩おうまや)” の例文
昌蔵は祖父がまだ中老だった頃の矢倉下の屋敷で生れ、九間町のお小屋で幼年時代を、そして十一の年からは御厩おうまや町の組屋敷の中で育った。
柘榴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
昂然かうぜんとして顏をあげたのは、一寸良い男の浪人者御厩おうまや左門次でした。二十七八、身扮みなりもそんなに惡くはなく、腕つ節も相應にありさうです。
と院の御厩おうまやの別当となり、丹波国を領した。院が出家されると法皇と申し、主上が元服されぬうちは童の髪形であられることを、義仲は今まで知らなかった。
さて若殿様は平太夫へいだゆうを御屋形へつれて御帰りになりますと、そのまま、御厩おうまやの柱にくくりつけて、雑色ぞうしきたちに見張りを御云いつけなさいましたが、翌朝は匇々そうそうあの老爺おやじ
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この御巡幸の諸準備には、本県より出張した書記官や御用掛りの見分がある上に、御厩おうまや課、内匠たくみ課の人々も追い追い到着して、御道筋警衛の任に当たる警部や巡査の往来も日に日に多くなった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
売下げを希望する者は、江戸の雉子橋外きじばしそと御厩おうまやへ、特別のつてを求めて出願する……その貴重なる薬品を、番兵さんの役得とはいえ、茂太郎はここで振舞われたことを、光栄としなければなるまい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
駒は、桜田の御厩おうまやから借りて来た葦毛あしげだった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
米搗の男達は、大概冬場だけ國許から稼ぎに出て來る越後者が多く、御厩おうまや河岸の仕事場に寢起して、夏場は留守番二人だけになつてしまひます。
御屋形おやかたの空へ星が流れますやら、御庭の紅梅が時ならず一度に花を開きますやら、御厩おうまや白馬しろうま一夜いちやの内に黒くなりますやら、御池の水が見る間に干上ひあがって、こいふなが泥の中であえぎますやら
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
五、乙原丙午おとはらへいご 御厩おうまや奉行二男
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
昂然こうぜんとして顔をあげたのは、ちょっと良い男の浪人者御厩おうまや左門次でした。二十七八、身扮みなりもそんなに悪くはなく、腕っ節も相応にありそうです。
その信者の一人なる浪人者御厩おうまや左門次が同じく東海坊の門弟で、用人を兼ねてゐる定吉といふ白い道服の中年男と共に、群衆の整理、修法の進行等、一しゆんの隙もなく眼を配つて居ります。
その信者の一人なる浪人者御厩おうまや左門次が同じく東海坊の門弟で、用人を兼ねている定吉という白い道服の中年男とともに、群衆の整理、修法の進行等、一瞬の隙もなく眼を配っております。
定吉さん、御厩おうまや樣、それに棟梁とうりやうも、越後屋さんも——