従僕じゅうぼく)” の例文
旧字:從僕
父がマレーフスキイ伯爵はくしゃくうでをとって、広間を横ぎって玄関げんかんの方へ連れ出し、従僕じゅうぼくのいる前で、冷やかにこう言い渡したのである。——
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
従僕じゅうぼくにしろ伯爵にしろ僕を侮辱したが最後、賎民せんみんだ」これもモーツァルトの自尊心の爆発した言葉であった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
すなわち紹介しょうかいを求めて軍艦奉行ぐんかんぶぎょうやしき伺候しこうし、従僕じゅうぼくとなりて随行ずいこうせんことを懇願こんがんせしに、奉行はただ一面識いちめんしきもと容易たやすくこれをゆるして航海こうかいれつに加わるを得たり。
わしは一生その人の従僕じゅうぼくになってもよい。一文の金でも惜しいこの大みそかに、よくぞ一両、そしらぬ振りして行燈の傍に落し、短慶どのの危急を救って下された。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし自分の従僕じゅうぼくが一命を捨て自分の難を救うほうの恩誼おんぎははるかに重いと僕は思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
父は外出しているし、母は気分が悪いから何も食べたくないと言って、寝室しんしつにとじこもっていたのだ。従僕じゅうぼくたちの顔色から、わたしは何かしら変ったことが起きたなと察した。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
たとえば向こうの人がきみだとか親であるとか、てんであるとかであるとか、ともだちであるとか、あるいは従僕じゅうぼくであるとか、それぞれおんほどこしてくれた相手によりて区別したるに過ぎぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)