徒輩とはい)” の例文
理解なき徒輩とはいからしばしば空虚な言葉として受け取られている「人類」なるものは、理解ある人にとって切実なる現前の実在である。
つまり私に徳川幕府の細作かんじゃになれと云われるのでした。当代の政治しおき順服まつろわぬ徒輩とはいを一気に殲滅ほろぼす下拵えを私にせよというのでした。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
我が作れる狭き獄室に惰眠だみんむさぼ徒輩とはいは、ここにおいて狼狽ろうばいし、奮激ふんげきし、あらん限りの手段をもって、血眼ちまなこになって、我が勇敢なる侵略者を迫害する。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
「程の知れた汝らの路銀などに目をくるる徒輩とはいと思うか。さような浅い眼では、敵地へ隠密に来る資格はないぞ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる徒輩とはいはいわゆる人生の劣敗者、もしくはその候補者である。速やかに志を改め意気を練るに非ずんば、ついに一生を暗黒のうちに終るような不幸を見るであろう。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
その訳は——下世話げせわにいう、うじより育ち、二十を越すまで、素性すじょう卑しく育った者を、この城中へ入れることは、いろいろとへいがある。二つには、この周囲には、浪人者の不逞ふてい徒輩とはいがいるらしい。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しかるになお一方には頑迷なる保守恋旧れんきゅう徒輩とはいが、憲法の発布を以て皇室の尊厳を冒涜するものの如くに考え、帝政党と称するものを組織して、あくまで時論に反抗を試みんとした。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)