徒事いたずらごと)” の例文
そうしてその科学界を組織する学者の研究と発見とに対しては、その比較的価値どころか、全く自家の着衣喫飯ちゃくいきっぱんと交渉のない、徒事いたずらごとの如く見傚みなして来た。
学者と名誉 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
君が語りおわる時、私は君のおもてを凝視して、そこに Ironie の表情を求めた。しかしそれは徒事いたずらごとであった。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
けれどもそれは徒事いたずらごとで、お松の力でどうしようというのではありません。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今から思えば形容の辞もない程の徒事いたずらごとではあるが、試みに某年三月現在のその職員録についてこれをけみするに、姓名を明記するもの総計概算一千六百六十三名の中において、源氏が実に七百二十一名
己に向けてくれたのも、徒事いたずらごとではなかった。
鳴戸なるとを抜けるたいの骨は潮にまれて年々としどしに硬くなる。荒海の下は地獄へ底抜けの、行くも帰るも徒事いたずらごとでは通れない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしは今これを筆にのぼするに至るまでには、文書を捜り寺院をい、また幾多の先輩知友をわずらわして解決を求めた。しかしそれはおおむね皆徒事いたずらごとであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし口で言うのは徒事いたずらごとだ。詞で物の形を