強慾ごうよく)” の例文
もっとも、佐吉が強慾ごうよくで、二人の給金を何年越し払わないそうで、イヤな思いをしても、急に飛出すわけにはいかない事情もあったようです。
そうして、もしその神が神の眼で自分の一生を通して見たならば、この強慾ごうよくな老人の一生と大した変りはないかも知れないという気が強くした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慾深き人の心と降る雪は積るにつけて道をわするゝと云う、慾の世の中、慾の為には夫婦の間中あいなかも道を違えます人心ひとごゝろで、其の中にもまた強慾ごうよくと云うのがございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
でなくてさえ強慾ごうよくな石見守は、私腹しふくをこやすためと家康のきげんをとるために、金坑掘夫ほりをやとって八方へ鉱脈こうみゃくをさぐらせる一方に、甲斐かい百姓ひゃくしょう町人ちょうにんから、ビシビシと苛税かぜいをしぼりあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し与右衛門さんは強慾ごうよくであるかわり、彼はうそを云わぬ。詐は貨幣かね同様どうよう天下のとおり物である。都でも、田舎でも、皆それ/″\に詐をつく。多くの商売は詐にかれた蜃気楼しんきろうと云ってもよい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
にわか発心ほっしんして、ついに仏道に入ったというところをかいたもので、あのお稚児ちごさんは、その晩泊った旅人、実は観世音菩薩の御化身ごけしんが、強慾ごうよくな老婆をいましめの方便ということになっているのです
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これほど細君の病気に悩まされていた健三は、比較的島田のためにたたられる恐れをいだかなかった。彼はこの老人を因業いんごう強慾ごうよくな男と思っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とにもかくにも、自分の歳のサバを読むような、生優しい女ではなく、冷酷で、押しが強くて聡明りこうで、強慾ごうよくで、高利貸に生れ付いたような、たくましい心の持主でした。
文「何うもしない、手前のような強慾ごうよく非道な者を生かして置くと、生先おいさき長き両人の為にならん、手前一人をくびり殺して両人を助ける方が利方りかただからナ、此の文治郎が縊り殺すから左様心得ろ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)