引捕ひっとら)” の例文
そのときこそ引捕ひっとらえてくれるぞと、私は深く心に期するところがあった。そしてそれからは毎日のようにH街に出ばって眼を光らせた。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よしよし今宵は引捕ひっとらへて、後黄金丸に逢ひし時、土産みやげになして取らせんものと、心に思ひ定めつつ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
裏門の騒ぎというのは、職工風の男が、ジロジロ邸内を覗き込んでいるので、見張りの刑事が引捕ひっとらえて検べようとすると、いきなりピストルを取出して手向いをした。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私が一つこころみて見よう、何でもれは一番、藩主を引捕ひっとらえて談ずるが上策だろうと相談して、私は大きに御苦労なけだけれども、日比谷内にある仙台の屋敷にいっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
与八をそそのかして、宇津木のお浜をなわにまでかけて引捕ひっとらえさしたのは何のためであろう。
もちろんその目的は、珠子と、私の生れついたる美しい脚を騙取へんしゅしたる——敢えてそういうのだ——その男とを引捕ひっとらえるためであった。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いかさま見違みまごふべきもあらぬ黒衣なり。彼奴きゃつ松の幹に登らんとして登り得ぬは、思ふに今まで金眸が洞にありて、酒を飲みしにやあらん。引捕ひっとらへて吟味せば、洞の様子も知れなんに……」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
此度こたびは黄金丸肩をかすらして、思はず身をも沈めつ、大声あげて「おのれ今日も狼藉ろうぜきなすや、引捕ひっとらへてくれんず」ト、走りよって木の上を見れば、果して昨日の猿にて、黄金丸の姿を見るより
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
そして天罰てんばつとはいえ重傷を負っている烏啼を、遂に他愛たわいなく引捕ひっとらえた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)