引張込ひっぱりこ)” の例文
これは小供が彼方あっち向いているのを、美味しい物即ち肉を喰わせてやるから、此方こっちへ向けといって引張込ひっぱりこむ意で、これがいわゆる育の字の講釈だそうである。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あんな素性わけも分らねえ者を無闇に引張込ひっぱりこんでしまって何うするだ、医者様の薬礼まで己がしょわなければなんねえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
神田の兄哥あにい、深川の親方が本郷へ来て旅籠を取るすうではないから、家業はそれっきりである上に、俳優狂やくしゃぐるいを始めて茶屋小屋ばいりをする、角力取すもうとり、芸人を引張込ひっぱりこんで雲井を吹かす、酒を飲む、骨牌かるたもてあそ
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
い酒を持って行って一ぱいって、衝立ついたての内に居るのだね、それで娘がお百度を踏んでけえる所を引張込ひっぱりこんで、お前さんがおつう世辞を云って一杯飲んでお呉れと盃をさして、調子のい事を云うと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
めえは男がいからむすめ引張込ひっぱりこんで、優しげに話をして、色事になっちまえ、色事になって何処どこかへ突走つッぱしれ……おらうちへ逃げてう、其の上で己が行って、父さまに会ってよ、お前も気に入るめえが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)