引合ひきあわ)” の例文
だから素人を山へいれるのはよほど高い代価をもらわなければ引合ひきあわないといいます。松茸ばかりでありません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
黒沢岩太郎覚えたか、按摩の佐の市とは世過ぎの仮の名、本名は磯見要の一子佐太郎さたろう、二十年目でかたきあだにめぐり逢うとは、日頃信心する観音様のお引合ひきあわせ——
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
もすそたたみにつくばかり、細くつま引合ひきあわせた、両袖りょうそでをだらりと、もとより空蝉うつせみの殻なれば、咽喉のどもなく肩もない、えりを掛けて裏返しに下げてある、衣紋えもんうつばりの上に日の通さぬ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
喬介はそう言って、捕縄を掛けられたセーラーを私に引合ひきあわした。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
山吹やまぶきつつじがさかりだのに、その日の寒さは、くるまの上で幾度も外套のそでをひしひしと引合ひきあわせた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いやいや、私にはとてもよい友だちがあるのだよ、引合ひきあわせてやろう」
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その上に乗って、雨戸あまど引合ひきあわせの上の方を、ガタガタ動かして見たが、きそうにもない。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)