引傾ひっかたむ)” の例文
ぐしゃりとひしゃげたように仕切にもたれて、乗出して舞台を見い見い、片手を背後うしろへ伸ばして、猪口を引傾ひっかたむけたまま受ける、ぐ、それ、こぼす。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石磈道いしころみちを向うへ切って、おうちの花が咲重さきかさなりつつ、屋根ぐるみ引傾ひっかたむいた、日陰の小屋へくぐるように入った、が、今度は経肩衣を引脱ひきぬいで、小脇に絞って取って返した。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、困った事は、重量おもみされて、板が引傾ひっかたむいたために、だふん、と潜る。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
床几しょうぎ在処ありかも狭いから、今注いだので、引傾ひっかたむいた、湯沸の口を吹出す湯気は、むらむらと、法師の胸になびいたが、それさえさっと涼しい風で、冷い霧のかかるような、法衣ころもの袖は葭簀を擦って
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
首を引傾ひっかたむけた同じ方の一眼が白くどろんとしてつぶれている。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
首を引傾ひっかたむけた同じ方の一眼いちがんが白くどろんとしてつぶれて居る。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)