ぐら)” の例文
「そこは食物ぐらですから暫く忍んでおいでなさい。酒を花の下に置き、犬を林のなかに放して置いて、わたし達の計略が成就じょうじゅした時に、あなた方に合図をします」
越前は、ふたたび、自室へもどって、文庫から、印籠をとり出し、またすぐ降りて、中庭門から、役宅ぐらの路地を抜け、幾廻りもして、柵門から獄舎の世界へ、通り抜けた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燻製くんせいますがあるし、山羊の乳まであるんだから、まるで食物ぐらにいるようなものだわね。
どこか岩壁がんぺきのあいだに適当てきとうな物置きぐらがなかろうかと富士男は四、五人とともに、北方の森のなかをさがしまわった、するととつぜん異様いようのさけびがいんいんたる木の間にきこえた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「これは、荒木家のうまや仲間から、ふと耳にしたのだが、ご主君官兵衛様のとらわれている場所は、城内の北の隅で、俗に、天神池と呼ばれている藤棚のそばの武器ぐらだと聞いた。——惜しむらくは、絵図面の手に入る工夫がないが」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)