店屋みせや)” の例文
店屋みせやといふと殆ど無いと言つてよい村の廣い本通りを歩かないで、この果物畑の直線の路を通つて、自分の家にかへる。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
それには近所の店屋みせやの電話を借りる便宜があったとしても、なるべくそれを避けて公衆電話を使うようにすること、等をも云い含められて行った。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「また籠抜けかい? 店屋みせやなんかでだと嫌うらしいけど、宅なんかじゃ構わないから、なんなら、行くときにも、宅へ来て、宅の裏から出て行ったらよかない?」
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
通りでは店屋みせやはどこも締まっていた。横町のカフエや酒場からの電燈の光がれているきりだった。スピイドをかけた自動車が、流星のように駒込こまごめの方へと通りすぎた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
みちりょうがわに、いえっていました。それらのなかには、店屋みせやがまじっていました。そして、ところどころあるあきはたけとなって、むぎや、ねぎが、青々あおあおとしげっていました。
かたい大きな手 (新字新仮名) / 小川未明(著)
折角単純な公私両もちいの服装を考え出したところで、はき物・被り物を自然の変化に放任しておいたら、頭はほこりを怖れ足は泥を怖れて、働こうという男女の職業は茶屋か店屋みせや
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
店屋みせやさへしまる。……旅籠屋はたごやもんとざしました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
停車場を出て橋を一つ渡ると、直ぐそこに町端まちはならしい休茶屋や、運送屋の軒に続いてくすぶりきった旅籠屋はたごやが、二三軒目についた。石楠花しゃくなげや岩松などの植木を出してある店屋みせやもあった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)